国道367号線の大原バス停で京都バスを降り、呂川沿いの参道を登ると三千院に着く。参道は四人幅ぐらいの急な坂道で、途中に喫茶や土産物屋が並んでいる。行き交う参拝者は二人連れが多く、案外に若いカップルも見た。老夫婦や老いた母娘が互いの足元を労わり合いつつ降りてくる。登山姿の団体客は幹事の案内で「後200m」と後続に伝言しながら登っていた。
その掛け声を聞いて、少し、ほっとする。既に腿の付け根に亀裂が入ったような心細さや腰の抜けそうな頼りなさがあった。手摺のない坂は下りが心配だ。山道は休日に限る。萎えても誰なとが手を貸してくれるだろうという漠然とした信頼感だ。生来、横着である。
辻に着き、深呼吸した。
国道から見上げた山並みは随分白く霧ばんで見えたが、真っ只中に来てみれば澄み渡っていた。煙草を忘れる清冽な空気だ。耳から呼吸できそうな静かな仙気だ。紅葉の声明が辺りに響き渡っている。
俺も、ズボラに、むーと念じ、三千院門跡を素通りする。参観料約1500L$である。こないだ高価な本を買ったばかりなので、あいにく、手持ちがないのだ。手持ちの本は、約8000L$だった。結構ずっしり重荷である。京阪で淀に行くようにポケットの裸銭でブラブラ手ぶらで来ればよかったのだが、今日は、なんだか新入りと一緒に登りたかったのだ。
律川に架かる橋の奥に勝林院があった。門構えが素晴らしい。大原問答の霊地である。法然上人がやっちゃった道場である。上人でもやっちゃうぐらいだから、俺のような凡夫がやっちゃったぐらいで悶絶する必要もなかろ。
裏口に回って戸口から中を覗き込んだ。門前の小僧が、手元の本を撫でる。時を超え、世を越えて、ここにやってきちゃった言葉。
The Simple Feeling of Being Embracing Your True Nature
奇妙な巡り合わせに、うふふ笑いだ。
▼Wish You Were Here: 生命の光
http://suncafe-meditation.blogspot.com/2008/11/blog-post_09.html
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